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お店に入ると、黒い服に白のエプロン、黒髪を二つのおだんごにした女性の精霊が笑顔で迎えてくれた。この精霊さんがお店の主のショーコさんだ。
「こんにちは、ショーコさん」
「今日は一人なの?」
「はい。トラネコさんとブータくんに先に行ってって言われて……」
わたしが住んでいる世界、水や海の精霊たちが集まって暮らしている空の海で、今日はお友だちのトラネコさんとブータくんと砂浜で遊んでいた。
突然、トラネコさんがショーコさんのところにおかしを食べに行こうと言い出して……けど、ブータくんと先に寄りたいところがあるからとトラネコさんに言われて、わたし一人で先にショーコさんのお店に来た。
本当はトラネコさんと一緒に来たかったけど、用事があるなら仕方がない。
「レンちゃんをエスコートせずに先に行かせるなんて、あの二人は何をやっているのかしら。私が男の子だったら、こーんなに可愛いレンちゃんを放っておかないわ。王子さまから奪っちゃおうかしら」
「えっと、あの……」
可愛いと言われて嬉しいけど照れてしまうことと、奪われてしまうことは困ること。どちらを先に言おうか、どう言ったらいいのか考えていると、
「そんなことしたら、あのワガママネコ王子が暴走するわね。まあ、あのネコ王子のワガママ暴走なんて、たいしたことじゃないけど」
テーブル席に座って本を読んでいた女性が言った。
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