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「あなたなの? 何の用?」
「………」
「今さら何よ、もう私に関わらないで」
プツリと一言も発することなく通話を切られ苛立ち紛れに受話器を置いた。
あの男だ、間違いない。これまで音信不通だったのに今さら何の用なのよ。まさかミヨを奪うつもりかしら。
あの男は出て行く前に必ずミヨを取り返しに来ると言っていた。その準備でも整ったとでも?
私はテーブルに置き直したグラスの中身を飲み干した。
翌日、今日もパートは休みでこれから外出しようというときに娘が先生を連れて家にやって来た。待ち合わせがあるというのに何か悪さでもしたのだろうか。
よく見ると服が泥汚れしている。
「こんにちは、ついそこでミヨちゃんとあったので一緒に来ました」
娘はそそくさと自分の部屋へと行ってしまい、事情も分からないのに若そうな女性の先生と二人きりにされる。
「あの、娘がなにか?」
「いえ、家庭訪問です。ミヨちゃんから聞いてませんか?」
家庭訪問?そういえば昨日何かを言い出しかけていた。そういう大事なことはちゃんと話してくれないと
家の中は少し散らかっており人を上げられる状態ではない。先生には少し待ってもらいリビングのテーブルの上や酒ビンを片付けた。
それから予定していた先方に遅れる連絡も入れる。
「失礼します。」
先生をリビングまで案内しミヨの学校での行いなどを聞かされる。
「ミヨちゃんはちょっと成長が遅いようです、他の子に比べると身長も体重もやや低いですね。
健康的には問題ないとは思います。」
「あの、娘に友達がいるようなんですけど、どんな子なんですか」
先生の話を遮り今度はこちらの話をふる。あんな娘と付き合う友達とは一体どんな子なのだろうか。
「あぁ、サツキちゃんですね。最近仲が良いようでいつも一緒にいます。」
「サツキちゃん… 」
一通りの話が終わると先生は次の訪問先に向かう為、素早く席を立つ。
「あっそれから最近この辺りで不審者が目撃されてますので充分に注意してください。」
それだけ言い残して先生は立ち去った。
私も先生がアパートから完全に離れたであろう頃合いを見計らい、随分待たせている待ち合わせ場所まで向かった。
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