友達のお母さん

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その夜、私は娘が汚した服を見てため息をついた。こんなに汚れていては綺麗に落ちないかもしれない。 ダイニングで夕食中の娘を見ると着ている服が破けて青アザが見えている。 「ミヨ」 私が声を掛けると娘は体を震わし酷く怯えている様子を見せた。服のことで怒られると思っているのか。 「泥遊びでもしたの?」 「ううん、転んだだけ」 転んだような汚れ方ではない、泥が跳ね上がって出来た汚れ方だ。 友達と遊んでいたことを知られたくないのだろうか、ならばそこまで無理に追求することもない。 私は汚れた服を洗濯機に放り込んだ。 数日後パート中に学校から連絡が入った。娘が体調が悪いので早退するというのだ。そのまま学校の保健室で安静にしていれば良くなるのでは、とも思うが学校側からの要請であれば無視もできない。 迎えに行くと娘はぐったりとして確かに体調が悪いようだ。 家についてからも娘の様子は変わらない。風邪にしては大袈裟でなにか他の要因でもあるのか。 部屋まで運んでベッドに寝かせる。 もうお昼も大きく過ぎているのにご飯も食べていない。急ぎご飯を作って娘の部屋にも運んだが口にしない。給食を食べてきたのか、あるいは食欲もないのか。 夕方になり学校も下校時間と思われる頃、小さな来訪があった。玄関を開けるとミヨと同じく小学生くらいの女の子が立っているのだ。 「あのミヨちゃんの友達のサツキです。ミヨちゃんの見舞いに来ました。」 この子が娘の友達、小さいのにしっかりした子。娘には勿体ないくらい。 まだ体調が優れないと伝えながらも娘の部屋まで案内しドアを開けると娘はサツキちゃんの顔を見て、またいつもの怯えた顔を曝した。 どうやら誰にでもそんな表情をするようだ。 娘をサツキちゃんと二人きりにし私はリビングに戻って棚からグラスを取った。 見舞いに来るほど仲がいいのか。私はまた高揚するものがありグラスを傾けた。 しばらくして私は二人の様子を見にノックをしてドアを開けると娘は眠ってしまったようでベッドの上で動かない。 枕も使わずぐっすりと… 傍らにはサツキちゃんが立っている。 「もう時間も遅いわよ」 「はい、帰ります」 私は娘を見た。こんなに幸せから離れかけている私と娘でも娘にはちゃんと見守ってくれる人がいるのね。 羨ましい。 ドアのところまで来ていたサツキちゃんは振り返り娘に言った。 『おやすみ』
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