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私には友達がいる。
私の唯一の友達サツキちゃん。
その子はいつも一人でいた。
学校の休み時間でも誰とも話さずずっと一人で、カバンに付けるには大きすぎる二〇センチ位の人形をいつも触っていた。
奥手で友達ができなくて、弱い子。
そんなその子を見て私は思った。
その子は私と似ている。だから私はその子と仲良くなれるのではないか、そう思って声をかけた。
警戒されたけれど私はその子とお話ができた。もっともほとんど私が一方的に話してばかりだけれど、私の初めての友達。
それから数日、私はその子といつも一緒にいた。
学校ではもちろん、帰るときも、けれどそうしてずっと一緒にいるとその子の性格が私の思っているものとは少し違うことがわかってきた。
その子は私のように寂しくないようで一人でいても平気だ。私にはその子しかいないのに、その子は私のことをそれほど気にしていない様。
そう気づいてから私はその子が少し怖くなった。
それでもその子は私の友達、かけがえのない存在。
下校中にカバンを持ちあったりもした。
今はその子が自分のと私のカバンを持っている。重いのかその子の足は遅く、前にいた私は声を掛ける。
「速く来て」
その子はカバンを持ち上げ直すと懸命に私のところまで駆け足ぎみになり、そんな姿が少し可愛く見えた。
けれどその子は足をつまずかせ道路へ転び、さらに運悪く走っていた軽トラックがその子に迫ってきた。
間一髪、軽トラックはその子の頭をかすめて停まり、軽トラックに乗っていたおじさんが心配そうに出てきた。
「大丈夫か?怪我は?」
当たりはしなかったのでどこも怪我はしていない。
それがわかるとおじさんは軽トラックに乗り込み去っていった。
「気を付けなさい、ここは車が多いから」
私が忠告するとそれが気に入らなかったのか、その子はキッとこちらを睨む。
とある日の授業の終わり、先生がプリントを二枚配った。
・知らない人にはついていかない
・知らない人とはしゃべらない
・大きな声で助けを呼ぶ
そんなことがプリントには書いてあった。
「最近不審者がいるようだからみんな気を付けてね」
そしてもうひとつ、家庭訪問についてのプリントだ。
私は胸が締め付けられる思いだった。ママに話さなきゃいけない。でもどんな風に?
先生とママを会わせるのもこわい。
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