友達

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私はなんだか今日はその子と会う気になれなくて、一人で家までの帰り道、ずっとママにどんな風に話そうか、そのことばかり考える。 家の前まで来ると帽子をかぶった怪しい男の人が立っていた。私の家はアパートだから他の部屋の人かもしれないけれど見たことのない人。 私は先生から貰ったプリントを思い出して、この人がその不審者だと思った。 けれど、振り返ったその人の顔、マスクを着けていたけれどすぐにわかった。 「パパ?」 パパは私の顔を見るとすぐに逃げ出して、追いかけたけれど、とても追い付けなかった。 帽子とマスクを着けていても私には分かる、間違いなくパパだった。 大好きだったパパ、優しくていつも私の味方で、でも家を出て行ってからずっと帰ってこなくて、もう会えないと思っていた。 パパ、会いたかった。どうして私も一緒に連れていってくれなかったの? そう聞きたくてももうパパは見えない、私は重い足取りで家まで引き返す。 家の前まで来て持たされているカギで開けると、普段この時間にはいないはずのママがリビングでお酒を飲んでいる。 ママはお酒を飲むととても恐くなる。 何度も叩かれたこともあるし、悪口を言われたり、パパのことも悪く言う。 私は逃げるように玄関近くの自分の部屋に駆け込んだけれど、家庭訪問のことを伝えなくちゃと部屋から出て恐る恐る近づいた。 「ママ…  明日ね…  」 頑張って言おうとするけれど声が突っ掛かってでない。 ママは私のことを鋭い目付きで睨み付けて私は恐くて視線を逸らした。 「何?」 「ぅ…ううん  何でもない」 私は力なく自分の部屋まで引き返すと、すぐに家の電話が鳴った。ずっと鳴ったことがなかったからママは驚いたのか咳き込んで、落ち着いてから電話に出た。 私はドアに耳を当てて盗み聴く。 「あなたなの? 何のよう? 今さら何よ、もう私に関わらないで」 誰かと話している、きっとパパだ。 ずっと帰ってこなかったけど、やっと帰れるようになったんだ。だから家まで来たり電話も掛けてきてるんだ。 ママが電話を終えて程なくしてママは赤い顔をして私の部屋まで来た。すごく酔ってるみたい。 なにも悪いことはしてないのに何度も何度も叩かれて服は破けてアザもできた。 ママはイライラするといつも私を叩く。 その日もずっと、泣いて謝ったけれどママは許してくれなかった。
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