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 河口が小さくつぶやくと、吉田は作り物の指を返した。作り物だと分かった今でもぎょっとする後輩に吉田はますます先が思いやられた。 「で、肝心の西彩子は?」 「え? さっきまでピアノの側にいたんですけど……」 「その指は目くらましだったわけだ。まあいい。玄関に回ろう。さっき電話がつながって、話はついているんだ」  二人はテラス窓から離れて、ぐるりとしているウッドデッキを右回りに歩くと玄関が見つかった。
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