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気まずい空気を破るように、階段を駆け下りる音がした。河口と吉田が顔をあげると、リビングに下りて来た彩子はにっこり微笑んでそのまま本栖に尋ねた。
「父さん。私が学校に行ってなくても、勉強はしていること、この人たちに見せてあげなくてもいいの?」
「見せてあげた方がいいかもしれないが、要するにお前が待ちきれなくなったんだろう。もう少し待ちなさい。今から何をするつもりだったんだ?」
「今待機しているのは、言語のどれかかな」
「先に始めていなさい。あとからこの二人を連れて行くから」
「分かった」
本栖の優しく諭す様子と、彩子の拗ねた様子は、何も知らなければ親子のありがちなやりとりにしか見えなかった。彩子が再び二階に行ってしまうと、吉田が呟くように言った。
「ああしていれば普通の子どもにしか見えないんだがなあ……」
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