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緊張で河口の呼吸が浅くなってきた頃、彼女はにこりと笑った。その柔らかな笑顔で爬虫類の印象は一瞬で消えだ。彼女はテラス窓を開けて河口に言った。
「あなたはいったい誰? もしかして私の脳波を計測しに来た人? 最近そういうの多い。ほんとはやだけど、父さんが世の中の役に立つはずだって言うから」
「いや、僕は君の脳波には興味がない」
恐らく「彼女」で間違いはないが、河口はなおも彼女の指を数え始めていた。
この少女が「彼女」であるならばその両手両足すべてに六指あるはずなのだ。
すると彼女はそんな河口の様子に気づいたのかサッと両手をひっこめた。
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