不正直な真実

2/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 その夜、数刻前、少年はいつものように街を見下ろす高台にいた。街明かりをつまらなそうに見つめたまま少年は腰を下ろした。 「醜い明かりだ。あの明かりひとつひとつを摘まんで消してやろうか……」  少年は手のひらを伸ばし、街の灯をひとつ、摘まむようなマネをした。つぎの瞬間、少年がその手を払うと、不思議なことにその街の灯は姿を消していた。 「フッ 我ながら情けない。こんなことをしてなんの意味があるというのか……さあ、仕方がない……ゆくか……。いずれにせよ、なんの意味もない行為ではあるけれど。なにもしないでいる。というわけにもいかないのサ」  少年は立ち上がり、街へと歩きだした。するとしばらくして 「……けて……たす……けて……くださ……い………」  どこからともなく、すすり泣くような声がした。 「おや? キミ、ボクのことが見えるのかい?」  少年は道端に横たわるソレを無表情に見下ろした。 「おね……がい……たすけ……て……」 「いや、見えてなどいないか……」  心なしかすこし残念そうに声に背を向け、少年はまた歩き出そうとした。 「どうかゼル……たすけ……て……」 「!」  今度という今度は目を見開き、少年はソレを凝視した。 「グルルルルルゥウウウ……」  それに応じるかのように、背後にはべる獣も喉を鳴らす。 「問題だ……問題だぞ。オマエ、なぜその名を知っている?」  少年は闇に手を伸ばした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!