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その夜、数刻前、少年はいつものように街を見下ろす高台にいた。街明かりをつまらなそうに見つめたまま少年は腰を下ろした。
「醜い明かりだ。あの明かりひとつひとつを摘まんで消してやろうか……」
少年は手のひらを伸ばし、街の灯をひとつ、摘まむようなマネをした。つぎの瞬間、少年がその手を払うと、不思議なことにその街の灯は姿を消していた。
「フッ 我ながら情けない。こんなことをしてなんの意味があるというのか……さあ、仕方がない……ゆくか……。いずれにせよ、なんの意味もない行為ではあるけれど。なにもしないでいる。というわけにもいかないのサ」
少年は立ち上がり、街へと歩きだした。するとしばらくして
「……けて……たす……けて……くださ……い………」
どこからともなく、すすり泣くような声がした。
「おや? キミ、ボクのことが見えるのかい?」
少年は道端に横たわるソレを無表情に見下ろした。
「おね……がい……たすけ……て……」
「いや、見えてなどいないか……」
心なしかすこし残念そうに声に背を向け、少年はまた歩き出そうとした。
「どうかゼル……たすけ……て……」
「!」
今度という今度は目を見開き、少年はソレを凝視した。
「グルルルルルゥウウウ……」
それに応じるかのように、背後にはべる獣も喉を鳴らす。
「問題だ……問題だぞ。オマエ、なぜその名を知っている?」
少年は闇に手を伸ばした。
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