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闇の奥底から名を呼ぶ声がする。
知られてはならぬその名を呼ぶ声に、少年は手をのばし、その声の主を掴むと、闇から引きずりだした。
「オマエ、ナニモノだ!」
「……たすけ……て……」
「なぜだ?なぜ答えない?」
少年の問いかけも虚しく、『声』はまるで壊れたラジオのようにそれを繰り返すだけだった。
「………………け……て………」
やがてだんだんと『声』は力を失っていった。
「ダメだ……ダメだ、ダメだ、ダメだ! 謎だと? こ、これはよくない。まるでよくない。このままでは永遠になってしまう。この胸に生まれたシコリは永遠にとどまり、すべてを飲み込む塊になってしまう。どうする?……いやダメだ……しかし……時間がない……時間? そうか……そうだな……いいだろう、いいだろう、なあに、たいしたことではない」
少年はしばし、ひとり自問をつづけるとソレへと『手』を伸ばした。
「さあ
汝、神の子に非ず、人の子に非ず、闇に生まれし痘痕よ
醜く惨めで、か弱き存在、陳腐な魂よ
我はその命に逆らい、汝に『時』を与えん
『命』の求めるまま、その生をまっとうせよ!」
闇の中から光が生まれた
そして光がソレを包み込むと
ソレは静かに立ち上がった
「さあ語るがいい。オマエの犯した罪を。醜い生の欲望の果てを」
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