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不正直な真実
夜
は
研ぎ澄まされ
キミの
魂の
まんまなかに
突き刺さる
目を開けると、そこには月があった。
それは、ギリギリまで膨らんだ月が、今にもはちきれんばかりに輝いていた満月の夜のことだった。
「はぁー はぁー はぁー」
冷たい大気が薄く引き伸ばされ、大地に低く這っている。
日中の暑さがまるで嘘のように冷えた、山道をひとりの男が走ってゆく。
「やめろ!やめてくれ!わ、ああああぁぁぁぁぁぁあ」
――ドスンッ
音が鳴り、止み、やがてまた静寂が夜を包んだ。
人類がこの惑星に産み落とされる遥か前からそこにあって、”永遠”さえ思わせる星たちが居心地良さそうにまたたく。
すると、谷底を見下ろす目玉がふたつ光った。
「グルルルルルゥゥゥウゥウ」
「やめないかジュドゥ。ソレは醜い。そんなもの喰らえばオマエが汚れてしまうよ」
闇の中から生まれた獣の唸りを少年の声が制した。抑揚のない澄んだ声だ。
そして一瞬、闇が輝いたあと、闇が生まれた。
「ああ、美しい夜だ。この夜を汚す者をボクは許さないだろう。ただ、それだけのことだ……」
影はまた音もなく、深い森の奥へと消えていった。
――親愛なる傍観者諸。
君、つまりはそう、キミらのために時を少し巻き戻そう…………
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