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ハルがエプロンを着けて、柊の元へ水を運ぶ。
「今日は何にする?」
柊はそれには答えずに、秋鹿の方を顎でしゃくってみせた。
「ハルさん、あいつ、誰ですか、」
「え?」
ハルは秋鹿を振り向くが、視線は宙を浮いて、交わらない。
「あいつ、小学生だろ。俺の方が先輩なのに、挨拶もしないでシカトする。生意気だ」
よほど先刻の秋鹿の態度が気に食わなかったのか、だんだんと乱暴な口調になる。
ハルはまさか、と、目を見開き、
「柊君、あなた、あの子のことが見えるの、」
「見えるって……そこにいるじゃないですか」
柊は指で秋鹿を指し示す。秋鹿は肩をすくめた。
「まあ……、本当に秋鹿のことが見えるのですね」
柊は怪訝そうに眉根を寄せる。
「何ですか、もしかして、そいつ……」
お化け。
幽霊。
そう、云おうとしたのだろう。
しかし、ハルが、
「この子は私の孫です」
「孫!?」
柊は大声を出して椅子から立ち上がった。その大仰な反応に、秋鹿もびっくりしてしまう。
「ハルさん、孫がいたんですか!?」
ハルは泰然として頷いた。
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