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翌朝起きると、店に茶漬けと助六の姿があった。
「あいかー、おはようおはよう」
茶漬けが元気良く挨拶してくる。くるくるとその場を回って、尻尾もしっかりと立っている。
「おはよう。茶漬け、昨日はごめんなさい」
秋鹿が謝ると、茶漬けは頸を傾げて、
「昨日? 何だっけ?」
すぐにハルにも、おはようおはようと、飛びつく。秋鹿に尻尾を踏まれたことなど、すっかり忘れてしまったようだ。
「気にするな、秋鹿。昨日のことなら、あやつはもう何も憶えてはおらぬ」
淡々と、助六が云う。
「そう……なんだ」
あれほど大騒ぎをしていたのに、かけらも憶えていないのかと、秋鹿は驚いた。しかし、自分が茶漬けに痛い思いをさせてしまったのは事実だ。二度とあんな失敗はするまいと、心に決める。
朝食を終えると、茶漬けたちは「パトロール」に出かけていった。
「さて、私たちも仕事をはじめましょう」
「はい」
ハルの号令で、二人は開店の準備に取りかかった。掃除をし、花の水を換える。書棚の隅に埃が溜まっているのを秋鹿が気附いて拭き取ると、ハルがにこにことしてそれを見ていたので、羞しくなった。
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