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柊は今日も制服を着ていた。テーブル席に着くと、水を持ってきたハルに、
「今日のケーキは何ですか、」
「ロールケーキと、レモンタルトと、チーズケーキよ」
柊は秋鹿をちらりと見やった。
「じゃあ、レモンタルトを」
聞き間違いか云い間違いじゃないかと秋鹿は思った。しかしハルが、「はい、レモンタルトね」と、くり返す。昨日、あんなに不味そうだったのに、今日も頼むなんて。何を考えているのか判らない人だと思った。
「それと、珈琲をお願いします。アイスで」
「アイス珈琲ね。判ったわ」
ハルは伝票を書きながら頷き、
「良かったら、ロールケーキも食べる? 今日はお客さんが少ないから、サービスです」
「良いんですか、」
「ええ。柊君、いつも来てくれますから」
じゃあ、いただきますと云った柊の表情は、実に嬉しそうだった。だが秋鹿が自分を眺めているのに気が附くと、たちまち不機嫌そうになる。鞄からあの本を取り出して、読みはじめた。
ハルが珈琲を淹れ、秋鹿がケーキを盛りつけた。
「秋鹿の盛りつけはとても可愛くて、とても綺麗ですね。ケーキがいちだんと美味しそうに見えるわ」
そうハルが云ってくれるので、これまであまり勉強してこなかった盛りつけを、もっと学ぼうと秋鹿は思った。
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