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麗ら彦たちの元へ運んでいくと、
「……佳いにおいがする」
眼帯の男がぼそりと云った。続いて麗ら彦の仲間たちも、
「あ、本当だ。佳いにおいがする」
「本当。すっごく佳いかおり。ケーキとはまた違う感じ。何だか不思議だわあ」
そうでしょ、と、麗ら彦は皆に云う。
「秋鹿、あなた昨日の集いで、ちょっとした話題になっていたわよ」
「え……?」
何のことだろうと、秋鹿はどきまぎとする。
「ハルさんの処に、可愛いお孫さんが来たってね」
「まあ、秋鹿のことが、」
ハルも目を円くする。自分の識らぬ処で、自分の噂をされるのは、秋鹿はあまり心地が良くなかった。それにしても孫である自分の話がされるほど、ハルと云う人はあやかしの中で有名なのだなと、思った。
「あたしたちも麗らさんに秋鹿君のこと聞いて、会いたくて来ちゃったのよ」
「あのハルさんの孫って、どんな子かしらあってね」
「姿が見えないって云うのも、ミステリアスで良いわね」
「ねえ。佳いかおりだけがしてね。風流ねえ」
仲間たちの会話から察するに、秋鹿の噂を流したのは麗ら彦のようだ。秋鹿はほんのちょっぴり、彼を恨みたくなった。だが麗ら彦はそんな秋鹿の気持ちなどつゆ識らず、
「みんな、秋鹿のことにすっごく興味持ってたわよ。そうそう、白帝様も近く遊びにいくつもりだって云ってらしたわ、ハルさん」
「そう、判ったわ」
ハルは頷いた。
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