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 帰り際に、麗ら彦の仲間がハルに云った。 「今日は(たの)しかったわあ。ありがとね、ハルさん」 「いつ来ても、このお店も、ハルさんも大好き。あたしたち、ハルさんと出逢えて本当に良かったわ」  眼帯の男も頷く。 「まあ、私の方こそ、みんなに出逢えてとても仕合わせですよ。またいつでもいらっしゃいな」  ハルは目を(ほそ)めて、彼らを見つめた。  ハルとあやかしたちとの間には、あたたかな信頼関係が結ばれているようだった。そんなハルを、秋鹿は(すご)いと思い、同時に羨ましくなった。どうしたらこんな関係を、築けるのだろう。  テーブルを片附けながら、秋鹿はハルに(たず)ねた。 「おばあちゃんとみんなは、いつの頃からの友達なの、」  そうね、と、ハルは皿を重ねたトレイを持ち上げて、 「ずっと子どもの頃からですよ。もう何十年になるでしょうねえ」 「そんなに、」  今でも若く見えるハルが、もっと若く、子どもだった時代があるのかと想像すると、変な感じがした。 「ええ、もうずっと、長い時間、附き合ってきたんですよ」  ハルは過ごしてきた時間を思うように、遠い表情になった。 「おばあちゃんは、凄いね」  秋鹿の言葉に、照れたように笑う。「そうかしら」 「うん」秋鹿は頷いた。  あんなにみんなから信頼されて。愛されて。長い間、友情を育んで。  それはハルが、素晴らしい人だから。いつも穏やかで、公平で、やさしい人だから。ハルを嫌う人なんて、きっと、いないんだろう。
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