1093人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
帰り際に、麗ら彦の仲間がハルに云った。
「今日は愉しかったわあ。ありがとね、ハルさん」
「いつ来ても、このお店も、ハルさんも大好き。あたしたち、ハルさんと出逢えて本当に良かったわ」
眼帯の男も頷く。
「まあ、私の方こそ、みんなに出逢えてとても仕合わせですよ。またいつでもいらっしゃいな」
ハルは目を繊めて、彼らを見つめた。
ハルとあやかしたちとの間には、あたたかな信頼関係が結ばれているようだった。そんなハルを、秋鹿は凄いと思い、同時に羨ましくなった。どうしたらこんな関係を、築けるのだろう。
テーブルを片附けながら、秋鹿はハルに訊ねた。
「おばあちゃんとみんなは、いつの頃からの友達なの、」
そうね、と、ハルは皿を重ねたトレイを持ち上げて、
「ずっと子どもの頃からですよ。もう何十年になるでしょうねえ」
「そんなに、」
今でも若く見えるハルが、もっと若く、子どもだった時代があるのかと想像すると、変な感じがした。
「ええ、もうずっと、長い時間、附き合ってきたんですよ」
ハルは過ごしてきた時間を思うように、遠い表情になった。
「おばあちゃんは、凄いね」
秋鹿の言葉に、照れたように笑う。「そうかしら」
「うん」秋鹿は頷いた。
あんなにみんなから信頼されて。愛されて。長い間、友情を育んで。
それはハルが、素晴らしい人だから。いつも穏やかで、公平で、やさしい人だから。ハルを嫌う人なんて、きっと、いないんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!