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突如、茶漬けがけたたましく吠えながら店に飛び込んでくる。
「ハル様ー、大変大変だよお、兄者が大変なんだよお」
秋鹿の足にぶつかって、きゃん! と、啼く。あまりの勢いで、秋鹿も咄嗟によけることが出来なかった。
「ごめんね、茶漬け。大丈夫?」
秋鹿はしゃがんで、茶漬けの頭を撫でた。
「秋鹿? 秋鹿いるの?」
「うん。頭ぶつけたとこ痛くない?」
茶漬けはきょろきょろと店内を見回した。
「ハル様は?」
「おばあちゃんは、買い物」
「じゃあ、秋鹿で良いや。秋鹿、兄者を助けてよー、いちだいじなんだよお」
両足を上げて、訴える。
「助六が? どうしたの?」
「いいからとにかく来てよー、秋鹿。一刻を争うんだよお」
云うなり、茶漬けは玄関に突進していく。扉にぶつかってしまうと、秋鹿が慌てた瞬間、茶漬けの姿が消えた。
「え……っ?」
秋鹿は急いで扉を開ける。すると茶漬けはそこにいた。どうやら扉を通り抜けたらしかった。
「ほら、こっちだよ、秋鹿! 早く早くー!」
と、茶漬けは走りだす。
「ま、待って」
脇目も振らず進んでいく茶漬けの後を、秋鹿も必死に追いかける。たどり着いたのは、木々に囲まれた広場だった。踏み入れた途端に電気のような痛みが、両の頬を切った。
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