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涼太と別れて十日が経った。
と言ってもあの日以来涼太と話し合いの場は持っていないからちゃんと別れたとは言いがたい。
私が一方的に避けていると言うのもあるが、あの日の出来事は万人の知るところとなり、当事者の涼太には戒告処分、看護師の吉野みちかは自主退職し、私には同情もあってか厳重注意のみの処分となった。
涼太が病院内で私に接触することがないように、他の放射線科の先生がルーティーンだった業務を変更してくれ、涼太が私を探すことすら困難としてくれた。
そこまでしてくれなくてもと思ってしまう。
なぜなら涼太は私のところになど来ることはないから。
あのあと私は郵送で婚約指輪を涼太の元へと送り返した。
プライドの高い涼太がそれを肯定し、別れたくないなどと言ってくるような人間ではないことは良く知っている。
振られたんじゃない、振ったんだ。捨てられたんじゃない、捨てたんだ。きっとそう思っているはずだ。
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