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季節は穏やかな春を迎えていた。 新入職員として四月一日に綾宮総合医療センターの放射線科勤務医となった。 大学病院の分院ではあるが、三五〇床ほどで、大学の千を超す病床数には足元にも及ばない規模だが、その分他科の医師との連携も良く、カンファレンスも綿密に行われている様子だった。 「一番右側が久世先生に使っていただく読影室になります」 三つ並ぶドアのうち、右手のドアを指しながら案内してくれたのは放射線医局長の山崎先生。他に放射線治療の専門医の中山先生がいて、三人で読影・治療・RIやMRの注射などを持ち回ることになる。 大学病院より後にできたこの病院は、大学を真似ているのか読影室までの並びに違和感を感じることが少なかった。 と言ってもどこの病院も、救急車が入って撮影となることが多いので救急科の並びや近くに放射線科を置く所が多いのでどこに行っても同じ感覚を持つのかもしれない。 一番多く関わる技師さんたちに挨拶を済ませ、個室へと入る。 電子カルテの会社も大学と変わらなかったので、使い方に何の問題もなく、山崎先生から簡単な分担を聞きすぐに読影に取り掛かった。
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