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『ごめん、ご飯遅れる。真希ちゃんもこっち一緒』 そう、メールが届いたのはひと段落ついた終業時間十分前だった。 「おけ。カテ頑張ってね。私もこれから救急科とカンファ行ってきますっと、送信」 メールを返信すると、電子カルテから名前をログアウトし、電源を落とす。 二人が時間内に来られないのはわかっていた。 というのも、急性上腸間膜動脈解離の患者さんが気になり、カルテを見ると循環器内科に入院となり、緊急でステント留置術が施されていたからだ。 その分、当日に予定されていたカテーテル検査や治療の患者さんは時間がずれ、遅れていく。 真希ちゃんの配属も大学の時と同じ放射線科だったから千佳と一緒にいるのは見当が付いていた。 どのくらい遅くなるかわからないけど、とんでもない時間になるようなら連絡くれるだろう。 私は荷物をまとめ、山崎先生に聞いた救急カンファレンスルームに向かった。 自然と胸の鼓動が高まっていた。 それに反比例するように足の歩みは遅く、心なしか胃のあたりが重く感じられる。 あの後、篠原さんの存在を認識してしまってから、私の意識はこのカンファレンスに向けられていた。 どう、篠原さんに接したらいいのだろう。 篠原さんは私にまた微笑んでくれるのだろうか。 めんどくさそうな顔をされてしまったら…そもそも篠原さんは私を覚えているのだろうか……。 取り留めのない不安が渦となって押し寄せる。
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