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調査先から公社に戻る途中で足を止め、着信を知らせてきたスマホを取り出した和真は、ディスプレイに浮かび上がった見知らぬ番号に眉根を寄せた。
「何だ? この番号は」
そして一応警戒しながら、応答してみる。
「……もしもし?」
そこで聞き慣れた甲高い声が聞こえてきた為、和真は呆気に取られた。
「かずにぃ? よしな」
「は? どうしてお前が、これに電話してくるんだ。番号を教えてはいないよな?」
「にぃに しってる」
「お前の兄貴にも、教えた覚えはないんだがな……」
淡々と言われた内容を聞いて、和真は思わず溜め息を吐いた。しかしすぐに気を取り直し、話を進める。
「まあ、取り敢えず良いか。どうした。何か急用か?」
「ねぇね ぷれぜんと」
「は?」
完全に意表を衝かれた和真に、美那が問いを重ねる。
「かずにぃ あげない?」
「この前言っていた、美樹への誕生日プレゼントの事か? そのつもりだが」
「あげない……」
「おい、どうした?」
ボソッと低い声で呟いたかと思ったら無言になってしまった為、和真が呼びかけてみると、美那が質問を再開した。
「かずにぃ ねぇね きらい?」
「……全面的に好きではないかもな」
「よしな だいすき!」
「そうか……。姉妹で仲が良くて、何よりだな」
本心からと分かる美那の宣言を聞いて、思わず遠い目をしてしまった和真だったが、彼女の問いかけは更に続いた。
「かずにぃ ねぇね すき?」
「……嫌いでは無いが?」
「いっぱい すき よしな うれしい」
真剣な口調でそんな事を言われた為、和真は相手の言わんとするところを察して、諦め気味に確認を入れた。
「……分かった。美樹の誕生日に合わせて、俺からプレゼントを贈れば良いんだな?」
「うん! ありがとー!」
「その代わり、俺の個人情報を流用するなと、兄貴に言っておけ」
意味が分からないかもしれないがと思いながら、一応和真が苦言を呈すると、美那が不思議そうに尋ねてくる。
「わるいこと?」
「悪い事だ」
「わかった よしな おしおき」
そう断言されてしまった和真は、驚いて彼女に尋ね返した。
「はぁ? お前が? 兄貴にお仕置きするのか?」
「うん おまかせ」
「ちょっ、美那! 何言ってるの! それに何する気だよ!?」
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