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「かづみさん、どうすればいい?」
「そうだなぁ……。美樹ちゃん、少し自分で考えてごらん?」
「じぶんで? ……うん、わかった」
素直に頷いた美樹は、腕を組んで一生懸命考え込む。
「うーんと、うーんとね……………。えぇーっと……。うん、わかった! しらべて、しょうこおさえて、わるいひとって、みんなにおしえる!」
それほど考え込まず、笑顔で元気良く解決策を口にした美樹を、桜は誉めた。
「良くできました。やっぱり美樹ちゃんは、頭が良いわ」
「そうときまれば、ぜんはいそげー!」
「美樹ちゃん、どこに行くの?」
一声叫ぶなり元気良く部屋を飛び出して行った美樹を、桜は慌てて追いかけようとしたが、そんな彼女を宥めながら、加積がゆっくり立ち上がる。
「慌てるな。美樹ちゃん位頭が良いなら、次に行く所は決まっている。幸いここには、その筋のプロが揃っているしな」
「ああ、そうね。やっぱり美樹ちゃんは頭が良いわ。四歳児とは思えないわね」
それを聞いて苦笑した桜が、加積と一緒にそのフロアのエレベーターホールに出向くと、予想通りエレベーターを待っている美樹を見つけて笑みを深くした。
「かずまー! おしごとあげるー!」
信用調査部門が入っているフロアに加積達に付き添われて入って来るなり、一直線に和真向かって駆け出した美樹を見やって、室内にいた全員が何事かと戦慄した。そしてこれまでに、散々彼女に振り回されている和真は、あからさまに嫌そうな顔で彼女を出迎える。
「いきなり何なんですか、美樹さん。現に私は仕事中なんですが」
「わるいやつ、だいしきゅうしらべて!」
和真の机までやって来て、自分の要求のみ口にした美樹を見下ろした和真は、思わず溜め息を吐いた。
「……人の話を全然聞いていませんね。因みに『悪い奴』とは、一体誰の事ですか?」
「よしのちゃんとけっこんした、わるいやつ!」
「『よしのちゃん』って誰ですか……」
「美子さんの妹さんの一人だ」
微妙に話が通じない相手にうんざりしていると、美樹に追い付いた加積が苦笑しながら解説を加えた。それを聞いた和真が、皮肉げに顔を歪める。
「それはそれは……。会長と社長の目が、よほど節穴だったらしいですね」
「パパとママは、いまいそがしくてたいへんなの! だから、よしきがてんちゅーするの!」
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