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両親を責められたと思った美樹が、ムキになって反論すると、和真はそれ以上茶化すような事は言わずに話を進めた。
「はいはい、事情はなんとなく分かりました。そうなると、調査の依頼者は美樹さんになるんですね?」
「うん。パパとママにはないしょだよ? しんぱいかけちゃ、ダメ」
「調査するのは構いませんが、そうなると調査費用はどうやって支払うおつもりですか?」
「ちょうさひよう?」
キョトンとした顔になった美樹に、和真は真顔で話を続けた。
「ええ。美樹さんがお小遣いを貰っているかどうか知りませんが、貰っていてもそれで払えるとは思えませんが。ここはなかなか高いですよ?」
そう言って少々馬鹿にするように笑ってみせた和真に、加積達が呆れ気味に声をかける。
「まあ、和真ったら相変わらず性格の悪いこと」
「ここは美樹ちゃんの可愛さに免じて、自分が肩代わりします位の事は言えないのか?」
「ビジネスはビジネスですから」
加積達の意見を一蹴した和真だったが、大人達のやり取りを黙って聞いていた美樹は、ここで得意満面で胸を張った。
「だいじょーぶ。よしき、ちゃんとはらうよ? いらいにんとのしんらいかんけい、だいじだもんね」
「おや? それならどうやって支払いをするつもりなのか、聞いても宜しいですか?」
「うん、まかせて! よしき、からだではらう!」
その宣言が室内に響き渡った瞬間、あちこちで複数の物が落ちる音が聞こえた。そして和真が間抜けな顔で聞き返す。
「はぁ? 今、何と言いましたか?」
「よしきのからだ、じゅようあるよね?」
「……ありませんよ、そんな物」
変わらずにこにこしながら主張してきた美樹に、和真は深い溜め息を吐いた。するとすかさず、加積達がからかってくる。
「本当か? 和真」
「実はロリコンとか言っても、私達驚かないわよ?」
「うるせぇぞ、ババァ」
「まあ、怖い」
殺気まじりの視線を向けてきた和真に、桜がころころと笑いながら応じると、美樹が少々残念そうに言い出した。
「そうか……。かずま、ようじょがこのみじゃなかったか……。じゃあ、しゅっせばらいにして!」
そんな事を明るく宣言した美樹に、もうこれ以上の議論が無駄だと悟った和真は、諦めながら話を続けた。
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