早苗の秘密

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『妊娠』 早苗と久々に夕飯を共にしていた 私も彼女も仕事が忙しかったのだ 特に、寂しいとか 何をしているのだろうかとか 腹立たしさとかは感じていなかった こう言うところが 変わった夫婦と言われるのだろう 一緒にいると楽しいし心がほのかに暖かくなる それは間違いなかった たから、好きである事に変わりは無かった 食事を始めて暫くすると 彼女は何だがモジモジしていた 何かを話したくてしょうがないと言った 雰囲気だ、私は意地悪をしたくなって わざと黙っていた 下向き加減に食事を採り 目を合わせようとしなかった すると 「祐二さん、あの~、話があるんだけど」 私はそらきたと顔を上げて ニコニコ笑った さてと今日はどんな無理難題を 押し付けて来るのやら この間の探さないでシリーズは 『楽しんで下さい』 『私は帰らないかもしれません』とか バリエーションが3つ位で収まった もう、書き置きにも疲れたのだろう さあ~来い! 何を言い出す? 私は黙っていた、すると 「妊娠したの」 ・・・・・・?・・・・!! へっ!な、な、な、なんだとぉう~! 「えっ?」 私は箸を落とした 突然、何を言い出すのだこの女は! すると 「狼狽えるな! やることをやれば出来るに決まっている!」 「そ、そりゃそうだが・・・本当に?」 真っ赤な顔をする私に早苗は 「あのさ~、良くやったとか 頑張って丈夫な子を産んでくれとか やったぁ~!とか無いの?」 「えっ、あ、そうか、そうだな、おめでとう」 カクッと早苗が肘をこかした 「他人事じゃ無い!でも~、うれしい~!」 私は素直に喜ぶ早苗に こっちまで嬉しく成った だが、私が人の子の親になど成れるのだろうか? 私は人並みの仕事をして 人並みの生活を送っている様に見えるが とんでもなく偏屈で変り者なのだ。
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