『探さないで下さい』

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『プロローグ』 私の名は傘無裕二 四郎水産大学、山前寺キャンパスの 教員をしている、学科は日本史である 私はとある事件が切っ掛けで 人を信じられなく成った だが、事件当時大学生だった私に 恩師松田先生が大きく影響を与えた 彼は歴史学の教員だったが 歴史に埋もれた人達の心情をその行動から探る 心理歴史学なるものに熱中していた 元はSFの中で出てくるものだが 彼は、私の研究はまさにこれだよ、と仰有った そして、私に心理学を学ぶことを薦め 私はそのお陰で教員となれたのである 今、私の興味は メンタリスト、と呼ばれるものだ 人の行動や心理を操り読み取る者 私は人の心が知りたいのだ ある人の心が・・・ 直接聞きたくても彼女は既に この世の人では無かった だからなのだろうか 私は心理歴史学にそして、メンタリスト に興味を持ってしまったのは 私は最近結婚した 古田早苗、(ふるたさなえ)と言う 私の忌み嫌う占師とだ その占師としての名前 なんと言うのか源氏名とでもいうのか? その名は『尻』だった なんでもそのふざけた名前を付けたのが師匠で 『物事には始まりと終りがある 終わりの事を尻と言う お前は人の悩み事の最後の防衛線 希望の最後の砦、尻となりなさい』 と尻と付けたのだそうだ まったく、私の回りの先人達は 変わり者が多いようだ 私はその説明を早苗から聞いて 大笑いをしてしまった 赤い顔をする早苗に恋慕の情が 燃え上がったのは言うまでも無い 結婚は困難を極めた 何故なら私の天敵の占師なのだから だが私は彼女に辞めろとは言わなかった 私は本当は占師を信じたいのかも知れない しかも彼女は最悪なサイキック 霊能力者だと言っているのだ そんな詐欺師的な商売を私は認めたく無かった だが彼女が言ったのだ 『あなたの心は壊れている 私が傍にいて治してあげる ゆっくりと時間を掛けて』 なんの事は無い 早苗は押し掛け女房なのだ。
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