『探さないで下さい』

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『探さないで下さい』act1 そんなある日 私は大学から仕事を終えて帰ってきた 「只今~」 何と無く照れ臭かった 人が待っている家に帰ると言うのは 独身一人生活が長かった私には 人が待っている、そんな事が嬉しかった。 だがいつもなら煩いぐらいに 返事を繰り返す早苗からの お帰り~、の言葉が無い うん?仕事かな いつもなら帰っている時間なんだが それに今日は休みと言っていたではないか 何でだ? 私はダイニングテーブルを見た 料理も何も無いし別段乱れた様子も無い むしろ綺麗に片付けられていた 私はフッと笑った 何か事件に巻き込まれる訳も 無いか・・・ 日頃、警察に協力してプロファイリング なんかしてるものだから 直ぐに事件と思ってしまう しかし、テーブルに置かれたメモを見て 私は事件だ!と思った そこには 『探さないで下さい、早苗』 とだけあったのだ 私は意味が解らなかった だが、私の頭の中で何かの引っ掛かりが起きた いつもの事だ言葉をそのまま受け取れないのだ 早苗に良く言われた 何故、何でも疑ってかかるの?と 私はその早苗の残した置き手紙に 違和感を覚えたのだ 「探さないで下さいか、何故 わざわざ、そんなものを残して行く?」 一体何を言っているんだ とお思いの方もいるだろう だが私はその言葉が気になったのだ すると、後ろから突然 「先輩、早苗さん家出ですか~ ああ、あ、やっちゃいましたね 浮気?ぼた子さんですか? それともキナコちゃん?」 「アホ!って お前人の家に勝手に入ってくるな!」 そこには警察官の三宅がいた 大学の後輩だ 彼の伝で私は警察から アルバイトを貰っていたのである 「なに言ってんですか! さっきから呼び鈴鳴らしても 返事も鳴ければ鍵も開いていたし 無用心も甚だしいですよ 事件かと思って入ったら いや~、こりゃ事件ですな」
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