『探さないで下さい』

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『探さないで下さい』act3 「先輩、やっぱり浮気を・・・・」 「アホ!そんな意味では無い 兎に角、探すぞ」 私は先ずクローゼットやタンスを調べた 「先輩、そんな所には隠れられませんよ 大丈夫ですか?」 「お前こそ大丈夫か? 家出なら何かを持っていっているだろう だが下着も洋服も持っていっていない それどころか、商売道具も置いていってある つまり戻るつもりだ、しかも直ぐにな」 「えっ?じゃ、何であんな手紙を?」 「だから、特殊な関係だと言ったろう」 「変わった夫婦ですね~ じゃ探さないんですか?」 私はう~ん、と考えた 朝からの事を思い出していた アッそうだ! そう言う事か・・・ しまった!私としたことが 今日は是が非でも 休まなければ成らない日だった そうか、ならば早苗の行く先は 私は三宅の運転する車で 市内のとあるレストランへと向かった あまり、人通りの無い場所だか 上手い洋食を食わせる店だ 私が初めて早苗の誕生日を祝った店だ 今日は早苗の誕生日だった 私は特別講習を引き受けて 大学に仕事に行ってしまった 彼女はいつものように何も言わずに見送った 本当は今日は1日、二人で遊び歩く 予定だったのに私はすっかり忘れていた まったく、女と言うのは 言葉にすれば大学の仕事など いくらでも断る理由はあったのに 店に入ると、案の定、早苗はテーブルで 簡単な食事を採りながらワインを飲んでいた 私を見付けると振り返り怒った顔で 「遅い」 と一言言った、私は彼女の前に座ると 「済まない、忘れていた、すっかり 君の誕生日だったね、ごめんごめん! アッ、プレゼントも忘れた 今から買いに行くか?何が欲しい」 と聞くと酔った勢いで早苗は 「バッグ・・・」 と言った 私はとんでもない散財に成るなと溜め息が出た まったく、どうしようも無い押し掛け女房だ。
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