第七章 誘惑

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 結局、警察官達は白石さんを一度も疑うことなく、赤メッシュの男性を連れて帰って行った。そして、白石さんや橋本さんに暴行された二人は後から来た救急隊員に救急車に乗せられ、病院へと運ばれた。 「…………」  その光景を見ていた白石さんは、フッと鼻を鳴らすと、無言で歩き始めた。此方に向かって歩いている彼は、野次馬達を冷淡な目付きで見ながら威圧的な雰囲気を醸し出している。 「何か? 何か文句あるんか?」  白石さんの後に続いて歩き始めた橋本さんは、野次馬達を睨み付け、彼らを脅すかのように言った。 「ーーあっ!! ワシ、今の携帯で撮してしもうたわ!! ……あいつら、『殺す』言うとったさかい、ホンマに殺されたらどないしよ!?」  白石さん達が歩いている最中、岩島さんが大きな声で言った。彼は左手に携帯電話を持っている。 「ならば、早く消すべきだ。誰かに見せたりでもしたら、捜されて殺されるぞ?」  すると、城山さんが岩島さんを見て大きな声で言った。 直後、野次馬達の中に居た男女十数人が、慌てて携帯電話を操作し始めた。きっと、白石さん達の動画や画像を消しているのだろう。  私はそれを見ながら岩島さん達に近付く。 「……また、あなた達が企てた計画ですか?」 そして、岩島さんの側で立ち止まって訊くと、 「……計画? ワシは、知らんで?」 と、岩島さんが眉を顰めて答えた。  すると、私達の側まで来た白石さんが口を開く。 「……計画なわけがないだろ? 俺は、いつものように対処しただけだ。  それに、俺が久藤としていた殺し合いなんだから、親父達には関係ない」 と、私の横で立ち止まった彼は、小さく溜息を吐いた。 「殺し合い? その割には、殺しちょらんやん? むしろ、助けちょうし。ーー馬鹿だろ?」  野次馬達が続々と去っていく中、白石さんの横で立ち止まった橋本さんが口を挟む。白石さんをチラッと見た彼は、フンと鼻で笑った。 「俺は、親父の真似事をしただけだ。 ーーそれよりも、お前こそ俺を助けたんじゃないのか?」  白石さんが、橋本さんに問う。 「は? 別に、助けちょらん。勝手に勘違いすんな」 すると、橋本さんは顔を顰めて、吐き捨てるように答えた。
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