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「へへ、一緒に卒業か」
なんて素敵な響きだ。分かっている。僕はもうすぐこの学校にいられなくなる。でも、そうならない未来を想像することくらいは自由だ。
「ふん。笑うがいいよ」
軽く頭突きを食らわされる。留年した事を馬鹿にしてなんていないのに。一緒という言葉が嬉しいんだ。
心臓が、痛むほど多くの血を循環させようとして藻掻いている。ああ、そうだ。思考回路は言わずもがな、自分でコントロール出来ない内臓すら喜びに震えているなんて、困ったもんだ。これがあれか、ブラザーコンプレックスというやつか。
勿論この財産分与書類を前にして、同じ高校のまま、同じ卒業式に参加するのは絶望的なのだけど、今はこの気分に浸っていたい。
「んふふー」
「なんかいつも変な笑い方するよな」
それは自覚しているけど、やめられないんだ。
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