第一話 Division of Property

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 僕の父が突然結婚すると言ったのは二年前。僕が中学二年生だった時。そして離婚すると言ったのが高校一年生の時。それも先々月。つまり入学式直後。しかもスカイプ通話で。  そして僕は母とその息子、すなわち義理の母と義理の兄が住む家に、居候として取り残された。まだ離婚は成立していないから、辛うじて家族なのだが。  美術品だの雑貨だのの買い付けの仕事をしている父とはもう半年くらい顔を合わせていない。連絡をよこす時間帯を考えれば、十三時間から十四時間差のアメリカの東海岸側にいそうだ。うん、時差にも詳しくなってしまった。  何度も何度も、眠い目をこすって交渉は続けた。でも、僕の願いを父が聞き入れてくれる事は無かった。自分が悪かったと繰り返して逃げてしまう。  そうだ、僕はただの子供でしか無かったから、親に歯向かう事なんて出来なかったんだ。
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