第二話 Relatives

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「母者、この髪型嫌いかな?」  少し不安になった。 「嫌いだったら毎朝あれなんていうんだっけ?ヘアアイロン?当ててくれないだろうよ。いつまでも洗面台占領してさ。多分髪の毛長かった時より楽しんでるよ母者は」 「そうであったか!うえへへ」  顔がほころんでしまう。ちなみに、「何々者」という呼び方は、今兄妹間でブームになっているだけで、普段からそう呼び合ってる訳ではない。 「あ、そうそう!顔剃りしてもらったから今ほっぺたトゥルットゥルだよ!トゥルットゥル!」  小吉の手がうなじから頬へと移る。 「ほう、これはなかなか」 「そうであろう?」  褒められて気分が良い。というか、小吉の少しざらついた手に触れられるだけで気分がやたらと良くなる。せっかく家族になった僕達の関係をぶち壊す書類を前にしているのに、無駄な元気が出てしまう。  横に座る小吉に体重を預け、書類を少しずつ読み進めていく。こんなに仲良くしている兄妹も珍しいと友人に褒められた事があるので、こうしているだけでも優越感を覚えてしまう。 「こんなの読めるのすごいな」 「ふふ、妹のスペックの高さを誇るがよいわ」  とはいえ、分からない単語は電子辞書を使おうが、ネット辞書を使おうが全く理解出来ないと悟ったので、とにかく記入欄に何を書けば良いのかを探ることくらいしか出来ないのだが。  今の所、住所氏名年齢だけしか分からない。アメリカのソーシャルセキュリティナンバーなんて母は持ってないから空欄で良いだろう。  母にとって不利な条項があるか心配にはなるが、あの気が小さい父がそんな非道な事はしないとは思う。いや、英語の書類をどかんと送りつけている時点でかなり非道か。ちょっと父が許せなくなってきた。  そうやって気分がくさくさした時は、少し首の角度を変えて、小吉の顔を見るれば解決する。相変わらず可愛いな。一つ年上に対して失礼極まりないけど。
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