乗車

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 その親子を初めて見たのは、 秋も深まった夕暮れ時のことだった。  大学の講義を終えた僕は、 いつものように市街行きの急行列車に乗り込み、 途中の『世の川』駅で『よみが丘』行きのローカル列車へ乗り継いで、 アパートへ向かうところだった。  僕は世の川駅のベンチに腰掛け、 二両編成の列車を待っていた。 ひゅるりと冷たい風にぶるっと体を縮こませ、 薄手のジャケットのポケットに両手を突っ込みながら、 本格的にコートが必要だなと空を見上げる。  夕焼けはいつにも増して赤黒く、 毛羽立った絨毯のようにまだらで薄い雲が広がっていた。
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