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頭上で列車到着のチャイムが鳴り響き、
やがて徐行した二両編成の列車が線路の端でピタリと止まった。
しばらくしてプシューとドアが開く。
僕はベンチから立ち上がると、
A4版のルーズリーフや教科書、
筆記用具の類が詰まった重たいカバンを肩にかけ、
進行方向から一番後方の扉を潜った。
それからすぐ左側にある運転席に程近い二人がけシートに腰掛ける。
そこは僕の定位置だった。
僕は誰もいない運転席越しに窓を眺めた。
ワンマン運転のこの列車に車掌はいない。
列車が走った後を、
かたつむりの粘液のように線路がずっと伸びていく様子を眺めながら、
ボロアパートがある鳥辺野駅まで行くのが僕の日課だった。
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