乗車

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 車中を見渡し、 僕以外に乗客がいないことを確認してからカバンを隣に置く。  列車の車庫や、 閉鎖した工場、 栗か何かの果樹園なんかを通り、 小高い山の方へと走るこの路線は、 列車の本数も少なければ乗客も少ない。  特に僕がアパートへ帰る時間帯は、 社会人の帰省には少々早く、 乗客はいつもまばらだった。 そのまばらな人々ですら、 二駅先の住宅街がある夕陽丘駅でほぼ降りてしまうため、 終点の一駅前にある鳥辺野駅に着く頃には、 乗客は僕一人だった。  金曜日のこの時間帯は、 皆市街に出かけているのか、 最初から僕一人ということも往々にしてあった。  
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