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そしてこの日も、
どうやら客は僕一人のようだった。
ジリリリっと、
発車を知らせるベルが鳴る。
先頭のドアから運転手が乗客の有無を確認し、
いつものように時間をかけて扉が閉まる。
その時だった。
タタタっと、
僕の入ったドアから小さな子供を抱えた女性が駆け込んできたのだ。
「はあ、
危なかった」
女性は抱えていた子供を僕の対面側の席に座らせ、
ふう、
と、
ため息をつきながら、
自分もその隣に腰掛け、
背負っていたリュックを膝の上に乗せた。
タタン、
タタン、
と、
列車がゆっくり速度を上げながら走り出す。
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