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 薄化粧で髪を一つに束ね、 どこにでもいそうなごく普通の母親の姿が、 何故か僕の心の引っかかる。 流行りのおしゃれと同じようなメイクの女子大生ばかり見ているせいで、 こういう女性を目新しいと思うのかもしれない。 「ママ、 あそこの運転席もっとよく見たい」  ふと、 母親の隣に大人しく座っていた男の子が、 僕の隣の運転席を指差し言った。 「うん、 そうねぇ」  母親が曖昧な返事をする。
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