PM4:00

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三歳離れた妹が僕は昔から苦手だった。同じ家で同じ親に育てられたとは思えないほどに真逆の性分で、僕と違って妹は頭と口が同じ器官なのではないかと思うほど、余計なことまで良く喋る。 対して、一度に沢山の言葉を投げられると、頭の中でいろいろ考え過ぎて、言葉にするまで時間がかかる僕は、そんな妹に接する時、どうして良いか分からないことも多かった。 それは妹も同じだったようで、五年遅れて上京してきた妹が、この部屋を訪れたのはたったの二回しかない。今年の春にフランスに行くとなっても顔を出さないまま向かってしまった。 ”食堂 みやこ”を最初に見つけたのは、妹だった。田舎には無いお洒落な雰囲気のお店が憧れだったと言っていたが、僕は上京しても、田舎にも展開されているようなチェーン店ばかりお世話になっていたから、よく理解ができなかった。 ある日妹は、店の入っているビルと、隣のビルの間に震えながら丸まっていたという子猫を発見したと、タオルに包んだトラ猫を連れて、騒々しく部屋に上がり込んで来たかと思うと、やれ餌だの、やれ風呂だの僕にポンポンと指示をしながら世話をさせたのだ。 今では、ぽってりとしたボールのように丸いミヤコさんも当時は、がりがりに痩せて、右目は半分も相手おらず、尻尾は泥が乾燥してこびりつき、何とも弱々しい小さな命だった。 だけど僕はこの時、面倒な妹が面倒を持ち込んで来たなと、子猫のミヤコさんの世話をしながらも、腹の中ではイラつきが優先されていたのだから、思い返せば薄情は人間だったと、誰にバレるわけでもないのに恥ずかしく思う。 その日から突然に、人間一人と猫一匹の生活が始まって最初は不慣れなことばかりで、悪戦苦闘の日々を過ごした。 再び妹が部屋を訪れたのが、あれから三ヶ月も経過してからのことで、連れて来るだけ連れて来て、後は何もしない、その無責任さに、またもや僕は心を乱されていた。
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