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兄が仕事から帰宅すると両親と、都会に住んでいるはずの弟が晩御飯を食べていた。少し驚いた様子の兄がとりあえずスーツの上着を脱いでいると弟が話しかけてきた。
「よう。久し振り。今日友達の結婚式があって顔を出して来たんだ。すぐまた向こうに帰らなくちゃいけないんだけどな。兄貴、飯喰ったら空港まで送ってってくれないか?」
兄は部屋着に着替えるのをやめて軽くネクタイを緩めながら食卓に就いた。母親が料理を運んできた。弟の帰郷を知らされていなかったのは両親も同じらしく、少しだがおかずが明らかにいつもより少ない気がした。
「何時頃だ?別にいいけど。」
「ゆっくり食べててくれていいよ。まだ結構時間に余裕があるから。」
それを聞いて兄は「そう?」と言って弟の顔を見た。相変わらず子供っぽい呑気そうな顔をしているなと思った。ふと兄は立ち上がると食器棚の方へと向かった。その小さな引き出しの一つを開けると薄汚れて古ぼけたノートを取り出しテーブルに戻った。
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