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「これ何か憶えてるか?」
「いや何なのかわからないな。」
「この前、物置を整理していたら出てきたんだ。おまえが小2の夏休みに書いた日記帳だよ。例の、『火星に行った日記』だよ。」
「全然憶えてないな。なんだよ。その『火星に行った日記』って。」
「えー!忘れてしまうなんて信じられないな。全部の日付、おまえが火星での出来事を書いた嘘の日記だよ。見てみろよ。」
兄は弟にそのノートを手渡した。弟は手に取ってページを雑にペラペラとめくり、すぐに最後の方までザッと目を通して閉じた。
「そんな昔のこと憶えてないな。」
「相変わらず記憶力がないんだか嘘を言っているのかわからないけど、そうか…別に憶えてなくてもいいよ。今なら笑って話せるかと思って取って置いてたんだけどな。」
弟は不思議そうな表情を浮かべて訊ねた。
「今なら笑って話せるって?さっぱり何のことだかわからないな。その時何かあった?兄貴は相変わらず記憶力が良すぎるんだよ。」
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