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「お客様ご注文はお決まりですか?」
平常心を無理矢理装いながら彼の前に立つ
「今日のオススメとコーヒーを」
「かしこまりました」
いつもと同じ彼のセリフ
それがまた嬉しくてこそばゆくて口角が緩んでしまう
..いやいや
彼は私が作っているのを知らないんだから
「では少々お待ちくださいませ」
「..あの」
キッチンに向かおうとする私に投げかけられた彼の言葉
不意打ちだったので鼓動は急速に脈打った
「あ..えと..なにか?」
その言葉を出すのが今の私には限界だった
「いきなりすいません..今日のオススメもここの店長が作っているのですか?」
後から考えてみれば彼はどうしてこんなことを聞いてきたのか
謎で謎でしょうがない
「いえ..今日のオススメは私が作らせていただいてますが...?」
「そうですか」
「あの...?」
戸惑う私に気がついたのか彼は少し微笑んで言った
「とても..美味しいです」
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