第9章  ピンクの秘密(続き)

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だが、それは無理だった。 そしてその答えは、彼の言葉となって私の耳に返ってきた。 「だけど、美沙ちゃんにとって俺は、やっぱり過去だった。 それが分かったから、俺は彼女と結婚をした。 だけど俺は、やっぱり……、やっぱり美沙ちゃんを忘れきることが 出来なかったんだ。だから……」 苦しげに言葉を切って項垂れた彼は、泣き出しそうな声になった。 「俺ってさ、本当にずるいヤツだと思うよ」 自嘲気味に歪められた彼の表情が、辛そうに言う。 「俺達、子供が出来なかったんじゃなくて、俺が子供を作らなかったんだ。 どんなに彼女が欲しがっても、俺は、とうとう一度も直に彼女の中には 入らなかった。俺、作れなかったんだ、子供……。 ホント、どうしようもないほど卑怯なヤツだと思う。 だけど、どうしても……、どうしても、もしかしたらいつか美沙ちゃんと 再会するかもしれない。そうしたら、っていう感情を捨て切れなかった。 だから……」
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