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自嘲気味な笑いが、彼の口元から漏れ出てきた。
やっと……、やっと美沙ちゃんがこの腕に――。
そう呟いた彼は、大きく項垂れて苦しげにまた溜息をつく。
だが私は、やっぱり何も言えずに
その彼の大きな背中をゆっくりと撫で続けた。
「俺が結婚するって決めた時、横尾は、すごく反対したんだ。
アイツ、俺がどれだけ美沙ちゃんに惚れてて、まだ俺の中に
どれだけ美沙ちゃんが残ってるかっていうのを、ちゃんと見抜いてた。
だから、このまま結婚すれば、いつか絶対お互いに不幸になるって
言われて……。だけど……」
言葉を切った彼は、苦しげに息を吐き出した。
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