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恐らくその時の彼は、自分の気持ちからも逃げたかったのだろう。
そして、その逃げ場所を彼女との結婚に求めた。
しかし、ここまで彼を追い込んだのは、私に他ならない。
だが、だからといって私は、どうしてよいのかも分からなかった。
そしてその挙句に、ようやく出てきた言葉はこんな事。
「奥さん、今は?」
しかし彼は、黙ったままかぶりを振った。
「俺……、当然だけど、彼女の家族とも友達とも絶縁されてるから……」
風の頼りもないよ。
そう言って、またも自嘲気味に短く笑う。
私は、自身の膝の上に投げ出すように置かれた彼の腕に
そっと片手を重ねた。
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