第9章  ピンクの秘密(続き)

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恐らくその時の彼は、自分の気持ちからも逃げたかったのだろう。 そして、その逃げ場所を彼女との結婚に求めた。 しかし、ここまで彼を追い込んだのは、私に他ならない。 だが、だからといって私は、どうしてよいのかも分からなかった。 そしてその挙句に、ようやく出てきた言葉はこんな事。 「奥さん、今は?」 しかし彼は、黙ったままかぶりを振った。 「俺……、当然だけど、彼女の家族とも友達とも絶縁されてるから……」 風の頼りもないよ。 そう言って、またも自嘲気味に短く笑う。 私は、自身の膝の上に投げ出すように置かれた彼の腕に そっと片手を重ねた。
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