第9章  ピンクの秘密(続き)

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ちょっぴり湿っているワイシャツの下の彼の腕は、 心の落胆を表すように沈んだ冷たさがあった。 私は、彼の肩に頭をもたれ掛け、彼を抱きかかえるようにして 彼の背中に腕を回した。 懐かしいガウンの感触の下の彼は、 まるで絶望の淵に立つ罪人のように力がなかった。 「俺……、大阪に行かなきゃならないんだ」 あまりにも彼らしからぬ言動から、何かあるだろうと想像してはいた。 なのに私は、無能にも彼の言葉をただ繰り返す。 「大阪?」 「うん。あっちで、パーツ製作の会社を新たに子会社化することになってさ。 そこに出向しろ、って」 私の脳裏に、ふっと誕生日の数日前に、 慌てて空港からかけてきた彼の電話が蘇った。 「何年くらい行くの?」 しかし、私の言葉に、彼はわずかにかぶりを振った。
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