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雨の日の図書館はどこか重く、灰色の空気が流れていた。高校生になって2度目の梅雨入りが発表されたのは3週間前のことだった。私は今日も学校が終わるとすぐに図書館へ行き、読みかけの小説を手にとっていつもの席に着いた。町の様子がよく見える図書館の2階、大きな窓のすぐそばに本棚の列で匿われるようにぽつんと置かれた一人掛けのソファ。私の居場所。この席で本を読んでいる時だけは、深く息を吸うことができる。クジラが息継ぎのために海面に現れるように、私は私の居場所に戻って呼吸をする。息を止め、深く深く潜水するために。水たまりの上を車が通り過ぎていく音が聞こえた。
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