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待て、僕。ちょっと、ここで軌道修正だ。
思考の矯正を図るため、桧山に向いていた身体を、また斜向かいにした。いったん視線を外せば、落ち着けるよ。
降り積もる雪で白く姿を変えつつある線路と景色を目に映しながら、大きく深呼吸をひとつ。きんと冷えた空気を体内に取り込んでから、思考を巡らす。
えーと、まずは、桧山と過ごせる慰労会が楽しみすぎて、僕には珍しくペラペラ喋りまくってるうちにコイツの気に障ることを言ってしまったんだろうから、その挽回をしなくちゃいけないんだ。
ただ、何が悪かったのかがわからないから、取り敢えず――。
「あ、あのさ、僕が桧山を誘ったのは、静流先輩が……」
「あーっ! もう、いいって!」
「えっ? 桧山?」
「なんで、いつもそうなんだよ! なんで、いつもいつも、他のヤツの名前ばっかり、口に出すんだよ!」
「あ、あの……ひや、ま?」
その、桧山、気づいてる? お前の手……。
「俺の一番は、伊勢谷先輩なのに! なんで俺は、あんたの一番じゃないんだよ!」
あのさ、お前の両手が、さ。僕の胸に……こう、ぎゅうっ! って感じにさ。
まるで抱きしめるみたいに、ぎゅっと強く、後ろから巻きついてきてるんだよ? 包み込むみたいに、身体だって密着してる。
「ムカつく! マジ、ムカつく!」
なぁ、気づいてる? ここって、駅のホームなんだ。いくら怒りで頭に血がのぼってても、他人に誤解されるほどの興奮の仕方はよくないんだよ。
だから、無駄に心臓に悪い怒り方はやめて、早く離れてほし……。
「俺はっ……俺は、こんなに、あんただけを好きなのにっ!」
……え?
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