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「……また、生まれ変わって、また会えるわよね?」
それは五条さんを慰めるためではなく、もうすぐ来てしまう〝別れ〟を受け入れるために、私自身に言い聞かせるようなものだった。
すると、五条さんは私の枕辺に来て、私の手を取ってその唇に当てた。
「千年生き続けてきたからこそ、君に出会えた。君は、僕が初めて添い遂げた特別な人だ。……僕は〝君〟を愛している」
「まあ、こんなお婆さんに……ありがとう」
こんな五条さんの言葉は、年老いて死んでいく私の心をも瑞々しく潤してくれる。
「今度は君の生まれ変わりを待つよ」
「私が平安時代の桐子さんの生まれ変わりだったら、同じことでしょう?」
「そう、でも生まれ変わってくるトウコには、君の命も重なってる。そのトウコに、また恋をするよ」
死んでいく怖さや寂しさよりも、この人をまた独りにしてしまうことが切なかった。
それが、私が五条さんと交わした最後の会話。
喋ることができなくなっても、それでも私のちゃんと耳は聞こえていて、五条さんはずっと枕元で語りかけてくれてくれた。
私たちが二人で過ごした、幸せでかけがえのない時の話を……。
そして、透子として最後の眠りに就くとき……、
「おやすみ、トウコ。夢のような時間を、ありがとう……」
深く穏やかな五条さんの声が聞こえた。
おやすみなさい……愛しいあなた。
また、私が生まれ変わって目覚めるそのときまで……。
[ 完 ]
※ また後日、あとがきを追加します(*^^*)
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