夢の中の出来事

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意識が遠くなる瞬間に、目覚めてベッドの上で起き上がった。 私の頬を伝って落ちる涙。夢と現実との境目が分からなくて、しばらく胸を押さえて息を落ち着ける。 これは、初めて見る夢ではない。子どもの頃から何度か見たことのある夢だった。 子どもの頃「知らない人」だと思っていたのは、今も変わらない五条さん……。なんて不思議なことだろう。 その不思議さに包まれて、しばし呆然とした後、射し込む朝の光に目をやって、出勤するために立ち上がる。 夢の中では、非現実なことも起こりうる。不思議なことも起こるから、夢なのだ。 そう自分に言い聞かせてみても、それでもまた五条さんに会って確かめてみたかった。 私の見た夢は五条さんが語っていた出来事と関係があるのか。あの人はただ夢想を語っているだけなのか。それとも……。 実際に、五条さんの言う通り、あの人の額の傷はあり得ない早さで完治してしまっていた。
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