一緒に暮らそう

2/3
前へ
/24ページ
次へ
私のアパートに帰って濡れた服を脱ぐと、 「おいで。……温めてあげよう」 五条さんはもう一度私をその腕に包み込み、……キスをして、抱いてくれた。抑えきれない私の想いをなだめるように、優しく、何度も。 「実を言うと、女の人に触れるのは五百年ぶりくらいなんだ」 二人で横たわりながら、五条さんは腕の中にいる私を見つめ、頬を撫でてそう言った。五百年という〝時〟があまりにも長すぎて、私にはお伽話のようにしか聞こえなかった。 「君は何度も生まれ変わってるのかも知れないけれど、簡単に出会えるわけじゃない。出会えたとしても、もう結婚して子どももいたり、お婆さんになってしまってたり…。百年前くらいまでは栄養や衛生状態も良くなかったから、小さな子どもの内に死んでしまうこともあったよ。…だからこの時代に、まだ子どもだった君に出会えたのは奇跡だって思ったよ」 私は五条さんの話を聞きながら、小さな頃川で溺れて助けてもらったことを思い出した。 「本当は、君のことを見守るだけで、姿を現わすつもりはなかったんだ」 「……どうして姿を現してくれたんですか?」 無意識に私は、問い返していた。その問いを聞いて、五条さんはとても綺麗な顔で優しく微笑んでくれた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加