一緒に暮らそう

3/3
前へ
/24ページ
次へ
「君を助けるために、現さざるを得なかったとも言えるけど。それ以前に、ずっと見守ってきた君がとても愛しくて、どうしても君を抱きしめたくなったんだ……」 私の胸が切ない痛みを伴って、震えた。涙が零れでるのと同時に、私の唇からも言葉が零れでた。 「これからは、ずっと……。側にいてください」 すると、五条さんはいっそう切ない目で私を見つめた。 「僕は、君を幸せには出来ない。もちろん結婚もできないし、子どもも作れない。何より僕は年を取れないから、ずっと一緒にはいられないよ」 想いが通じたばかりだというのに、五条さんはそんな悲しいことを言った。 「あなたと出会ってしまって、私が他の人を愛せると思ってるんですか?これが運命なら、私はあなたから逃れられないんです。私が生きている間は、あなたを一人ぼっちにはしないから……だから、私をあなたの側に置いてください」 涙が溢れてきて、止まらなかった。その涙とともに、私は心の底から五条さんに懇願した。 五条さんはそんな私を見つめながら、涙を拭ってくれ、それからまた抱きしめてくれた。 「分かった……透子。ずっと君の側にいる……約束するよ」 その日から、私たちは一緒に暮らし始めた。手を取り合うように、ひっそりと。都会の人ごみに紛れて――。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加